島根県の東部に位置する安来市には、たけのこの栽培が盛んな島田地区があります。
この地域と深く結びついている郷土料理が「たけのこ山椒煮」です。
下ゆでしたたけのこを、カツオ出汁、薄口しょうゆ、酒、みりんなどで煮含め、山椒の香りを添えます。
たけのこの歯ごたえとほのかな甘みに、カツオの旨味と山椒のさわやかな刺激が重なる、春らしい煮物です。
ここでは、たけのこ山椒煮の特徴、島田たけのことの関係、食べられてきた時季、家庭での作り方、実際に作った人の感想を紹介します。
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島根県の郷土料理「たけのこ山椒煮」とは?
安来市の島田地区を主な伝承地域とする煮物
たけのこ山椒煮は、島根県東部の安来市島田地区を主な伝承地域とする郷土料理です。
島田地区では古くからたけのこ栽培が行われ、春になると、たけのこご飯や炒め物、煮物などが家庭の食卓に並んできました。
たけのこ山椒煮も、その土地で収穫した旬のたけのこを味わう料理の一つです。
使用する材料は家庭によって異なりますが、基本となるのは、たけのこ、カツオ出汁、薄口しょうゆ、酒、みりん、山椒です。
肉や魚を主役にせず、たけのこそのものの風味と食感を生かしているところに、この料理の素朴な魅力があります。
カツオの旨味と山椒の香りを重ねる
下ゆでしたたけのこを調味したカツオ出汁で煮るため、料理の印象はたけのこの土佐煮にもよく似ています。
たけのこ山椒煮では、さらに実山椒を加えたり、盛り付けた後に山椒の葉を添えたりして、春らしい香りを際立たせます。
煮汁を少なくなるまで煮含めることで、淡い色合いのたけのこに出汁と調味料の味がなじみます。
山椒の刺激だけを強くする料理ではなく、たけのこの甘み、カツオの旨味、しょうゆの塩味、山椒の香りを一緒に味わう煮物です。
たけのこ山椒煮と島田たけのこの歴史
弘化3年に始まったと伝わる島田地区のたけのこ栽培
安来市の島田地区は、安来市街地と鳥取県米子市街地の間に位置し、北は中海、南は山地に面しています。
農林水産省の「うちの郷土料理」によると、かつて島田地区は山に囲まれ、米を十分に収穫しにくい地域でした。
そこで安松市郎兵衛が弘化3年(1846年)に山林を開墾し、町内の清水寺から孟宗竹を移して母竹を増やしたと伝わっています。
栽培は周辺の農家にも広がり、島田たけのこは地域の特産品として知られるようになりました。
弘化3年は島田地区でたけのこ栽培が始まった年として伝えられているものであり、たけのこ山椒煮そのものの考案年が確認されているわけではありません。
地域でたけのこの収穫が広がり、さまざまな家庭料理に使われるなかで、たけのこ山椒煮も春の味として受け継がれてきました。
赤土と手入れされた土壌が育てる柔らかさ
島田地区の土には粘土質の赤土が含まれ、長年にわたって栽培する人たちが土を耕してきました。
この土壌で育つ島田たけのこは、繊維が細かく、肉質が柔らかいとされています。
地中深くに伸びたたけのこを掘るため、一般的なつるはしではなく、長さ1mを超える金棒を使うことがあるのも島田地区ならではです。
栽培農家の減少などにより収穫量は以前より少なくなりましたが、島田たけのこは現在も地域を代表する農産物の一つです。
たけのこ山椒煮が食べられる時季
島田たけのこの出荷は4月から6月ごろが中心
島田たけのこは、例年4月ごろから6月にかけて出荷のピークを迎えます。
島根県内のほかの地域では、4月下旬から5月上旬ごろがたけのこの主な収穫時季とされています。
ちょうど山椒の若葉が出る季節とも重なるため、たけのこと山椒を一緒に使うこの煮物は、香りでも春を感じられます。
家庭で収穫したたけのこも食卓に上る
島田地区に限らず、島根県内では自宅の庭や近隣の竹林でたけのこを掘り、自家用として食べる家庭もあります。
一度に採れたたけのこは、たけのこご飯、煮物、炒め物などに使い分けられます。
たけのこ山椒煮は、季節の恵みを無駄なく味わう家庭料理としても親しまれてきました。
家庭で作るたけのこ山椒煮の作り方

材料(2人前)
農林水産省「うちの郷土料理」で紹介されている材料をもとにしています。
- たけのこ:1本
- カツオ出汁:360cc
- カツオ節:適量
- 山椒の実:20g
- 酒:大さじ2
- みりん:大さじ2
- 薄口しょうゆ:大さじ2
- 山椒の葉:1枚
作り方
1:たけのこを湯がいてあくを抜き、5cmほどの短冊切りにします。
2:鍋にカツオ出汁、酒、みりん、薄口しょうゆを合わせ、たけのこを入れて煮ます。
3:実山椒を加え、たけのこに味を含ませながら煮ていきます。
4:煮汁が少し減ったら、カツオ節をこし布に包んで鍋へ入れ、弱めの火でコトコトと煮ます。
5:水分が少なくなったら火を止めて器に盛り、山椒の葉を添えます。
水煮たけのこでも作れる
生のたけのこは、料理に使う前の下ゆでとあく抜きに手間がかかります。
農林水産省のレシピでは、水煮たけのこを使ってもよいと紹介されています。
旬の生たけのこが手に入ったときは春ならではの香りを楽しめますが、下処理の負担を減らしたいときは水煮を選べます。
仕上げに実山椒を加えると味のアクセントになり、カツオ節を使って追いガツオをすると出汁の風味がより豊かになります。
レシピや味付けは地域や家庭によって異なるため、紹介した作り方は一例です。
たけのこ山椒煮を作った人のネットの口コミ・感想まとめ
水煮たけのこと冷凍した実山椒を活用する人がいる
実際にたけのこ山椒煮を作った人の投稿では、水煮たけのこと、春に下処理して冷凍しておいた青実山椒を組み合わせる方法が紹介されていました。
旬の時季にしか手に入りにくい実山椒を冷凍しておくことで、季節を問わず作りやすくなったという感想です。
この投稿では、水煮特有の香りを和らげるために流水で洗って水に浸し、たけのこを約3mmの短冊切りにしていました。
薄くしすぎるとシャキシャキした食感が弱くなるため、切る厚さも仕上がりを左右するポイントとして挙げられています。
煮汁を飛ばす終盤は焦げやすいため、鍋を揺らしながら仕上げるという工夫も見られました。
使う部位や味の濃さは家庭の好みによって変わる
別の投稿では、柔らかい姫皮を含む部分を使い、最後に実山椒を加えて仕上げていました。
家族が姫皮を使った若竹汁を好まなかったため、たけのこ山椒煮に落ち着いたという家庭ならではの経緯も紹介されています。
一方、完成した味を濃いめに感じる人に向けて、みりんとしょうゆを元の分量の3分の2ほどに減らす方法も示されていました。
水煮を利用して手軽に作る人もいれば、生のたけのこを自分でゆで、柔らかい部位まで生かす人もいます。
味の濃さや切り方に一つの正解があるのではなく、たけのこの食感や家族の好みに合わせて作られていることが分かります。
参考にしたサイトやブログ
たけのこ山椒煮に関するよくある質問(FAQ)
たけのこ山椒煮と土佐煮は同じ料理ですか?
よく似ていますが、まったく同じとは限りません。
土佐煮はカツオ節の風味を生かす煮物で、たけのこ山椒煮は実山椒や山椒の葉の香りを重ねるところに特徴があります。
島根県のたけのこ山椒煮はカツオ出汁やカツオ節も使うため、土佐煮に山椒の香りを加えたような仕上がりになります。
島田たけのこ以外では作れませんか?
ほかの産地のたけのこでも作れます。
農林水産省のレシピでは材料を単に「たけのこ」としており、水煮の使用も認めています。
ただし、郷土料理としての背景は、安来市島田地区で受け継がれてきたたけのこ栽培や、島田たけのこを春の食卓で味わう文化と深く結びついています。
まとめ
たけのこ山椒煮は、下ゆでしたたけのこをカツオ出汁、薄口しょうゆ、酒、みりんなどで煮て、山椒の香りを添える島根県の郷土料理です。
主な伝承地域である安来市島田地区では、弘化3年(1846年)に孟宗竹の栽培が始まったと伝わり、島田たけのこは地域を代表する特産品になりました。
料理の考案年は確認されていませんが、旬のたけのこを煮物やご飯として味わう食文化のなかで、春の家庭料理として受け継がれています。
生のたけのこを下ゆでして作るほか、水煮たけのこも使えるため、家庭の状況に合わせて挑戦できます。
たけのこの食感、カツオの旨味、山椒のさわやかな香りが重なる、島根の春らしい一品です。


