鳥取県には、日本海の魚介を使った料理だけでなく、山里の暮らしや農村文化から生まれた素朴な郷土料理も多く残されています。
その一つが、鳥取県中部の倉吉市周辺に伝わる「こも豆腐」です。
こも豆腐は、豆腐をわらで作った「こも」に包み、具材とともに形を整えて作る伝統的な豆腐料理です。
農林水産省「うちの郷土料理」では、鳥取県のこも豆腐は倉吉市周辺に伝わる料理で、主な食材として豆腐、人参、ごぼうが紹介されています。
現在では家庭で作る機会は少なくなっていますが、昔は祭りや結婚式、法事など、人が集まる特別な日に欠かせない料理として親しまれてきました。
この記事では、こも豆腐の特徴、由来、歴史、作り方、家庭で作るときのポイントまでわかりやすく解説します。
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こも豆腐とは?
こも豆腐の読み方と料理の概要
こも豆腐は「こもどうふ」と読みます。
「こも」とは、わらを粗く織って作ったむしろのようなものを指します。
こも豆腐は、その名の通り、豆腐をこもに包んで作る郷土料理です。
鳥取県のこも豆腐は、豆腐の間に人参やごぼうなどの具材をはさみ、わらで包んで蒸したあと、だしや醤油などで味を含ませて仕上げるのが特徴です。
豆腐をわらで包むことで、表面にわらの筋が残り、見た目にも素朴で温かみのある仕上がりになります。
また、わらの香りが豆腐に移ることで、普通の豆腐料理とは違った風味を楽しめる点も魅力です。
鳥取県で親しまれてきた地域性
こも豆腐は、鳥取県中部の倉吉市周辺で受け継がれてきた郷土料理です。
鳥取県というと、松葉ガニや白イカ、ハタハタなど海の幸を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、地域によっては魚が十分に手に入りにくい場所もあり、昔の暮らしの中では豆腐が大切なたんぱく源として重宝されていました。
農林水産省の紹介でも、魚があまりとれなかった鳥取県では豆腐がよく食べられ、庶民にとって貴重なたんぱく源だったとされています。
そのような食文化の中で、豆腐をよりおいしく、特別感のある料理として食べる工夫から、こも豆腐が受け継がれてきたと考えられます。
豆腐料理としての位置づけ
こも豆腐は、日常的に食べる冷奴や味噌汁の豆腐とは少し違い、手間をかけて作る行事食としての性格を持っています。
豆腐を切ってそのまま使うのではなく、具材をはさみ、わらで包み、蒸してから味を含ませるため、見た目にも料理としての存在感があります。
豆腐は淡白な食材ですが、だしや醤油の味を含みやすく、野菜の風味ともよく合います。
こも豆腐は、豆腐のやさしい味わいを生かしながら、わらの香りや具材の彩りを加えた、鳥取県ならではの伝統的な豆腐料理といえるでしょう。
こも豆腐の由来・歴史
「こも」に包んで作られたとされる背景
こも豆腐の名前の由来は、豆腐を包む「こも」にあります。
こもは、わらを粗く織ったむしろのことで、昔の農村では身近にある素材でした。
農作業で使われるわらを料理にも活用することで、豆腐に形をつけたり、香りを移したりする工夫が生まれたと考えられます。
わらで包んで蒸すことで、豆腐が崩れにくくなり、表面にはわらの筋がつきます。
この独特の見た目と香りが、こも豆腐ならではの個性です。
現代では食品用のわらを用意することが難しいため、家庭で昔ながらの作り方を再現するのは簡単ではありません。
そのため、巻きすや布巾などを使って形を整え、こも豆腐風に作る方法も考えられます。
保存食・行事食として受け継がれた理由
こも豆腐は、保存食というよりも、地域の行事や人が集まる日に作られてきた料理として知られています。
農林水産省の資料では、昭和30年頃までは氏神様のお祭りや結婚式など、ハレの日に必ず作った料理とされています。
豆腐は日持ちしにくい食材ですが、蒸して味を含ませることで、食卓に出しやすい料理になります。
また、豆腐だけでなく人参やごぼうを加えることで、見た目にも華やかさが出ます。
特別な日の料理として出されていた背景には、身近な材料を使いながらも、普段とは違う一品に仕上げる知恵があったといえるでしょう。
家庭料理として広まった歴史
こも豆腐は、倉吉市周辺の家庭や地域行事の中で受け継がれてきた料理です。
昔の農村では、氏神様のお祭りや結婚式、法事など、人が集まる日には家庭で手間をかけた料理を用意する習慣がありました。
こも豆腐もその一つで、昭和30年頃までは、地域の祭りや冠婚葬祭などのハレの日に作られていたとされています。
また、かつて村には共同の豆腐小屋があり、豆腐をたくさん作ることができたため、その豆腐を使った特別な料理としてこも豆腐が生まれたという説もあります。
豆腐は庶民にとって貴重なたんぱく源であり、身近な食材でありながら、わらで包み、人参やごぼうをはさんで仕上げることで、行事にふさわしい一品になりました。
現在では、家庭で昔ながらのこも豆腐を作る機会は少なくなっています。
しかし、行事やおもてなしの場で汁の具として使われることもあり、倉吉市周辺の食文化を伝える郷土料理として大切にされています。
こも豆腐の特徴と魅力

しっかりとした食感と素朴な味わい
こも豆腐の魅力は、まず素朴でやさしい味わいにあります。
豆腐を使った料理なので、口当たりはやわらかく、だしや醤油の味がじんわりと広がります。
一方で、わらで包んで蒸すことで形が整い、普通の豆腐よりも食べごたえを感じやすくなります。
中に人参やごぼうを入れることで、豆腐のなめらかさに野菜の食感が加わります。
特にごぼうの香りは、豆腐の淡白な味にほどよい風味を与えてくれます。
派手な料理ではありませんが、素材の味を大切にした郷土料理らしい落ち着いたおいしさがあります。
豆腐の風味を生かしたシンプルな調理法
こも豆腐は、豪華な調味料を使う料理ではありません。
基本となるのは、豆腐、人参、ごぼう、だし汁、醤油、砂糖など、家庭にある身近な食材です。
調理法も、豆腐に具材をはさみ、包んで蒸し、味を含ませるという流れです。
シンプルな料理だからこそ、豆腐の味、だしの風味、野菜の香りが引き立ちます。
また、煮含めて食べるだけでなく、輪切りや斜め切りにして、わさび醤油で食べることもあります。
温かい煮物としても、少し冷まして前菜のようにも楽しめるため、食卓に合わせて使いやすい料理です。
鳥取県らしい郷土料理としての魅力
鳥取県の郷土料理には、地域の自然や暮らしに根ざしたものが多くあります。
こも豆腐もその一つで、海の幸を使った料理とはまた違う、内陸部の生活文化を感じられる料理です。
わらを使う点には、農村の暮らしが色濃く表れています。
また、豆腐を貴重なたんぱく源として大切にしてきた時代背景も、こも豆腐の魅力を深めています。
ただ珍しい料理というだけでなく、地域の人々が身近な食材を工夫して食べてきた歴史が感じられる一品です。
鳥取県の食文化を知るうえで、こも豆腐はぜひ覚えておきたい郷土料理といえるでしょう。
こも豆腐の作り方
こも豆腐に使う主な材料
こも豆腐に使う主な材料は、豆腐、人参、ごぼう、だし汁、砂糖、淡口醤油、わらなどです。
農林水産省のレシピでは、こも豆腐2本分の材料として、豆腐1丁、人参、ごぼう、だし汁、砂糖、淡口醤油、わら、ナイロンひもまたはわらが紹介されています。
伝統的にはわらを使いますが、家庭で作る場合は食品用として安全に使えるものを用意する必要があります。
わらが手に入りにくい場合は、巻きすや清潔な布巾を使い、こも豆腐風に形を整える方法もあります。
ただし、本来のこも豆腐ならではのわらの香りや模様を再現するには、やはりわらを使うことが大きな特徴になります。
具材は人参とごぼうが定番ですが、家庭によっては卵、かんぴょう、ほうれん草、旬の野菜などを加えることもあります。
豆腐を包んで形を整える下ごしらえ
こも豆腐を作るときは、まず豆腐の水切りをしておきます。
水分が多いままだと崩れやすく、味も入りにくくなるため、しっかり水を切ることが大切です。
人参とごぼうは細長く切り、あらかじめだし汁、砂糖、薄口醤油などで薄く下味をつけておきます。
下味をつけておくことで、豆腐と一緒に食べたときに味がなじみやすくなります。
その後、豆腐を切り、豆腐の間に人参とごぼうをはさみます。
伝統的な作り方では、きれいに整えたわらの上に豆腐を並べ、具材をはさんでから包み、両端をしっかり縛ります。
形を整える工程は、こも豆腐の見た目を左右する大切なポイントです。
家庭で作るときの調理手順とポイント
家庭でこも豆腐を作る場合は、次のような流れで進めると作りやすくなります。
・人参とごぼうを細長く切る
・だし汁、砂糖、薄口醤油で具材に下味をつける
・豆腐を切って水切りする
・豆腐の間に具材をはさむ
・わら、巻きす、布巾などで包んで形を整える
・15分ほど蒸す
・だし汁、砂糖、淡口醤油で味を含ませるように煮る
・食べやすい大きさに切って器に盛る
ポイントは、豆腐を崩さないようにやさしく扱うことです。
また、煮るときは強火でぐつぐつ煮るのではなく、弱火から中火でじっくり味を含ませると、豆腐の形を保ちやすくなります。
仕上げは、煮含めたものをそのまま食べてもよいですし、斜め切りにしてわさび醤油で食べてもおいしく味わえます。
こも豆腐に関するよくある質問(FAQ)
こも豆腐はどこの郷土料理ですか?
こも豆腐は、鳥取県中部の倉吉市周辺に伝わる郷土料理です。
農林水産省「うちの郷土料理」でも、主な伝承地域は倉吉市周辺と紹介されています。
鳥取県の郷土料理には、とうふちくわ、どんどろけ飯、大山おこわ、小豆雑煮などがありますが、こも豆腐はその中でも豆腐を使った伝統的な料理として知られています。
こも豆腐と普通の豆腐の違いは何ですか?
普通の豆腐は、そのまま冷奴にしたり、味噌汁や鍋料理に入れたりして食べることが多い食材です。
一方、こも豆腐は豆腐をわらで包み、具材をはさみ、蒸してから味を含ませる料理です。
豆腐そのものを食べるというより、豆腐にひと手間加えて郷土料理として仕上げる点が大きな違いです。
また、わらで包むことで表面に模様がつき、香りも移るため、見た目や風味にも独特の個性があります。
こも豆腐は家庭でも作れますか?
こも豆腐は家庭でも作ることができます。
ただし、昔ながらの作り方ではわらを使うため、現在の家庭では材料の準備が少し難しい場合があります。
食品用として安全に使えるわらが手に入らない場合は、巻きすや清潔な布巾を使って形を整え、こも豆腐風に作る方法もあります。
本格的に再現したい場合は、郷土料理の体験教室や地域のレシピを参考にしながら作るとよいでしょう。
家庭で作る場合は、豆腐の水切りをしっかり行い、崩れないようにやさしく扱うことが大切です。
こも豆腐はどんな味わいですか?
こも豆腐は、豆腐のやさしい風味に、だしや醤油の味がじんわりしみ込んだ素朴な味わいです。
人参の甘みやごぼうの香りが加わることで、豆腐だけでは出せない奥行きが生まれます。
わらを使って作る場合は、ほのかなわらの香りも特徴になります。
濃い味付けの料理ではなく、素材の味を生かした落ち着いた味わいなので、和食の副菜や行事食の一品としてよく合います。
まとめ
こも豆腐は、鳥取県中部の倉吉市周辺に伝わる郷土料理です。
豆腐に人参やごぼうをはさみ、わらで作った「こも」に包んで蒸し、だしや醤油で味を含ませて食べる素朴な豆腐料理です。
昔は氏神様のお祭り、結婚式、法事など、人が集まる特別な日に作られていた料理で、豆腐を貴重なたんぱく源として大切にしてきた地域の暮らしとも深く結びついています。
現在では家庭で作られる機会は少なくなっていますが、学校の調理実習や郷土食の学習などを通じて、地域の食文化として受け継がれています。
こも豆腐は、鳥取県の食文化を知るうえで欠かせない、素朴で味わい深い郷土料理です。
鳥取県の郷土料理を調べている人や、昔ながらの豆腐料理に興味がある人は、ぜひ一度こも豆腐にも注目してみてください。


