鳥取県の山あいに伝わる郷土の味として知られているのが、栃の実を使った「栃餅」です。
栃餅は、もち米に栃の実を混ぜて作る昔ながらの餅菓子で、素朴な香りとほろ苦い風味が魅力です。
鳥取県では、八頭郡や鳥取市河原町、三朝町などの山間地域を中心に、栃の実を食材として活用してきた歴史があります。
山の恵みを手間ひまかけて食べやすくし、餅として味わう栃餅は、地域の暮らしと知恵を今に伝える郷土料理のひとつです。
この記事では、栃餅とはどのような食べ物なのか、鳥取県で受け継がれてきた歴史や魅力、作り方、よくある疑問についてわかりやすく紹介します。
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栃餅とは?
栃の実を使った昔ながらの餅菓子
栃餅とは、栃の木になる「栃の実」をあく抜きし、もち米と一緒に蒸してつき上げた餅です。
栃の実は見た目が栗に似ていますが、そのままでは強いあくがあり、苦みや刺激が強く食べることができません。
そのため、昔から水にさらしたり、灰汁を使ったりして時間をかけてあく抜きを行い、食べやすい状態にしてから餅に加工してきました。
手間のかかる食材ですが、丁寧に下処理された栃の実は、独特の香ばしさとほろ苦さを持ち、もち米と合わせることで素朴で味わい深い餅になります。
鳥取県の山間地域で受け継がれてきた食文化
鳥取県は山が多く、昔から山の恵みを暮らしに取り入れてきた地域です。
栃餅は、八頭郡や鳥取市河原町、三朝町などの山間地域を中心に伝承されてきた郷土の味として知られています。
これらの地域では、山で採れる栃の実を大切な食材として利用し、手間をかけてあく抜きしたうえで、もち米と合わせて餅にしてきました。
特に山間部では、米が十分にとれない時代もあり、木の実や山菜などを暮らしの中で活用する知恵が受け継がれてきました。
栃の実もそのひとつで、あく抜きに時間はかかるものの、保存性があり、山里の食生活を支える貴重な食材でした。
栃餅は、単なる甘い餅菓子というよりも、自然の恵みを無駄にせず、食べ物として活かしてきた先人の知恵が詰まった郷土の味です。
祝い事や季節の行事にも登場する郷土の味
栃餅は、日常のおやつとしてだけでなく、季節の行事や祝い事にも関わってきた食べ物です。
鳥取県では、地域の一般家庭でお正月の雑煮用の餅として栃餅を作り、食べる習慣もあります。
白餅とは違う色合いや風味があり、正月の食卓に並ぶと、山里らしい温かみを感じさせてくれます。
また、あんこを添えたり、小豆汁に入れておしるこのように食べたりすることで、栃の実のほろ苦さと甘みがよく合い、郷土菓子としての魅力も楽しめます。
栃餅の由来・歴史
栃の実が山里の貴重な食材だった背景
栃の実は、秋になると栃の木から落ちる大きな木の実です。
見た目は栗に似ていますが、食べるためにはかなりの下処理が必要です。
それでも昔の山里では、栃の実は大切な食料として活用されてきました。
米が十分に手に入りにくい地域では、もち米だけで餅を作ることが難しい場合もあり、栃の実を混ぜることで量を補いながら、栄養を取り入れる工夫がされていました。
栃餅は、限られた食材を大切に使い、自然の恵みを暮らしに取り入れてきた山間地域ならではの知恵から生まれた食文化といえます。
あく抜きの技術と保存食としての知恵
栃餅作りで特に重要なのが、栃の実のあく抜きです。
栃の実は非常にあくが強く、そのまま食べると強い苦みや刺激を感じます。
そのため、長時間水にさらしたり、灰汁を使ったりして、少しずつあくを抜いていきます。
この工程には時間と経験が必要で、昔は家庭ごとに受け継がれてきた技術でもありました。
あく抜きが不十分だと食べにくくなり、反対に丁寧に処理された栃の実は、餅にしたときに独特の香りと味わいを生み出します。
こうした手間をかけることで、山で採れる木の実を保存し、冬の食料や行事食として活用できるようにした点に、昔の人々の知恵が感じられます。
鳥取県で栃餅が受け継がれてきた理由
鳥取県で栃餅が受け継がれてきた理由には、山間地域の暮らしと深い関係があります。
八頭郡や鳥取市河原町、三朝町など、山に近い地域では、昔から山の恵みを食卓に取り入れる文化が根付いていました。
栃の実は、そのままでは食べられないほどあくが強いものの、丁寧に下処理をすれば保存食や餅の材料として活用できます。
そのため、米が貴重だった時代には、栃の実をもち米に混ぜることで量を補いながら、特別な餅として味わう工夫がされてきました。
また、栃餅は家庭で作られる郷土の味として、親から子へ、地域から地域へと伝えられてきました。
現在では家庭で一から作る機会は少なくなっていますが、鳥取県の山里の暮らしを感じられる郷土菓子として、今も地域の食文化を伝える存在になっています。
栃餅の特徴と魅力

栃の実ならではの香ばしさとほろ苦さ
栃餅の大きな特徴は、栃の実ならではの香ばしさとほろ苦さです。
白餅のようなシンプルな甘みとは違い、栃餅には山の木の実らしい深い風味があります。
口に入れると、ほんのりとした苦みや渋みが広がり、そのあとにもち米のやさしい甘みが感じられます。
この独特の味わいは、好き嫌いが分かれることもありますが、食べ慣れるとクセになる魅力があります。
甘いあんこと合わせると、栃の実のほろ苦さが引き立ち、上品な和菓子のように楽しめます。
もち米のやわらかさと素朴な味わい
栃餅は、もち米を使って作るため、やわらかくもっちりとした食感があります。
ただし、もち米だけで作る白餅と比べると、やや粘りが少なく、素朴で歯切れのよい食感になるのが特徴です。
この少し控えめな粘りと、栃の実の香りが合わさることで、昔ながらの田舎菓子らしい落ち着いた味わいになります。
派手な甘さはありませんが、噛むほどに風味が広がり、温かいお茶と一緒に味わうと、どこか懐かしい気持ちになる餅菓子です。
あんこやきな粉とも相性のよい郷土菓子
栃餅は、そのまま食べてもおいしいですが、甘みを加えることでさらに食べやすくなります。
代表的なのは、あんこを添えた食べ方です。
栃の実のほろ苦さと小豆の甘みがよく合い、甘すぎない和菓子として楽しめます。
また、きな粉をまぶしたり、砂糖醤油で食べたり、小豆汁に入れておしるこのように味わったりする食べ方もあります。
農林水産省の紹介でも、小豆汁に入れておしることして食べられることが示されています。
栃餅は、甘いものが好きな人にも、素朴な郷土料理が好きな人にも楽しみやすい餅菓子です。
栃餅と鳥取県のお雑煮文化
お正月の雑煮用として作られてきた栃餅
栃餅は、鳥取県の山間地域で日常のおやつや郷土菓子として親しまれてきただけでなく、お正月の雑煮用の餅として作られることもありました。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも、鳥取県の栃餅は八頭郡、鳥取市河原町、三朝町を主な伝承地域とし、地域の一般家庭でお正月の雑煮用の餅として作られてきたことが紹介されています。
白餅とは違い、栃餅には栃の実ならではのほろ苦さや香ばしさがあります。
そのため、正月の食卓に並ぶと、山の恵みを生かした鳥取県らしい素朴な味わいを感じられます。
三朝町で知られる小豆雑煮と栃餅
鳥取県の雑煮というと、小豆を使った甘い「小豆雑煮」が知られています。
一般的には白い丸餅を入れることが多いですが、鳥取県公式サイトでは、県中部の三朝町では古くから白餅の代わりに栃餅を用いる食文化があると紹介されています。
つまり、三朝町周辺では、小豆で作ったぜんざいのような甘い汁に栃餅を入れて味わう「とち餅雑煮」のような食べ方が伝わってきたと考えられます。
小豆のやさしい甘みと、栃餅のほろ苦い風味が合わさることで、白餅を入れた小豆雑煮とはまた違う、深みのある味わいになります。
栃餅雑煮は郷土食といえる?
栃餅そのものは、鳥取県の郷土料理として紹介されている餅菓子です。
一方で、三朝町などで見られる小豆雑煮に栃餅を入れる食べ方も、地域の暮らしや正月行事と結びついた食文化といえます。
鳥取県公式の資料でも、正月の小豆雑煮にした栃餅は「郷土の味」として人気があると紹介されています。
そのため、記事内では「栃餅は鳥取県の郷土料理であり、三朝町などでは小豆雑煮に入れて食べる地域性のある食べ方も伝わっている」と表現すると、正確で自然です。
栃餅雑煮は、単に餅を汁に入れた料理ではなく、山で採れる栃の実を大切に使い、正月の食卓で味わってきた鳥取県の郷土食のひとつとして紹介できます。
栃餅の作り方
栃の実・もち米・あんこなど主な材料
栃餅の主な材料は、栃の実ともち米です。
家庭や地域によって作り方は異なりますが、基本的には、あく抜きした栃の実をもち米と一緒に蒸し、餅つきの要領でついて仕上げます。
食べるときには、好みに合わせてあんこ、きな粉、砂糖、醤油、小豆汁などを用意します。
栃の実そのものに独特の風味があるため、味付けはシンプルでも十分においしく食べられます。
ただし、栃の実の下処理には手間がかかるため、家庭で作る場合は、すでにあく抜きされた栃の実や栃餅用の加工品を利用すると取り入れやすくなります。
栃の実のあく抜きと餅に仕上げる手順
栃餅作りの流れは、まず栃の実の殻を取り、時間をかけてあく抜きをするところから始まります。
栃の実はあくが非常に強いため、この工程を省くことはできません。
あく抜きが済んだ栃の実を、洗って浸水させたもち米と一緒に蒸し上げます。
蒸し上がったら、栃の実ともち米がよくなじむようにつき、食べやすい大きさに丸めます。
できあがった栃餅は、そのまま食べるほか、焼いたり、あんこを添えたり、小豆汁に入れたりして味わいます。
手間はかかりますが、その分だけ、自然の恵みと昔ながらの暮らしを感じられる一品になります。
栃餅に関するよくある質問(FAQ)
栃餅はどんな味がしますか?
栃餅は、もち米のやさしい甘みの中に、栃の実特有の香ばしさ、ほろ苦さ、わずかな渋みを感じる味わいです。
白餅よりも素朴で、山の木の実を使った郷土菓子らしい深みがあります。
あんこやきな粉と合わせると苦みがやわらぎ、初めて食べる人でも食べやすくなります。
栃の実のあく抜きはなぜ必要ですか?
栃の実は、そのままではあくが非常に強く、強い苦みや刺激があります。
そのため、食用にするには必ずあく抜きが必要です。
あく抜きをすることで、食べにくさがやわらぎ、栃の実本来の香ばしさや風味を楽しめるようになります。
栃餅作りにおいて、あく抜きは最も大切な工程のひとつです。
鳥取県の栃餅はいつ食べられてきましたか?
鳥取県の栃餅は、秋に収穫した栃の実を使い、冬からお正月にかけて食べられてきた郷土の餅です。
特に八頭郡や鳥取市河原町、三朝町などの山間地域では、栃の実を丁寧にあく抜きし、もち米と合わせて餅にする文化が受け継がれてきました。
お正月には雑煮用の餅として作られることもあり、三朝町では小豆を使った甘い雑煮に、白餅の代わりとして栃餅を入れる食べ方も知られています。
小豆のやさしい甘みと栃餅のほろ苦さが合わさることで、鳥取県の山里らしい素朴で味わい深い正月の味になります。
このように栃餅は、日常のおやつや郷土菓子としてだけでなく、季節の行事や正月の食卓とも結びついた郷土食として親しまれてきました。
栃餅は家庭でも作れますか?
栃餅は家庭でも作ることができます。
ただし、栃の実のあく抜きには時間と手間がかかるため、初めて作る場合は注意が必要です。
家庭で気軽に楽しみたい場合は、あく抜き済みの栃の実や、市販の栃餅を利用する方法もあります。
市販品なら、焼いたり温めたりして、あんこやきな粉を添えるだけで栃餅の風味を楽しめます。
まとめ
栃餅は、栃の実ともち米を使って作る、鳥取県に伝わる昔ながらの郷土菓子です。
主に八頭郡や鳥取市河原町、三朝町などの山間地域で受け継がれてきた食文化で、山の恵みを暮らしに生かしてきた先人の知恵が詰まっています。
栃の実はそのままでは食べにくいほどあくが強い食材ですが、丁寧なあく抜きによって、香ばしさやほろ苦さを楽しめる餅へと変わります。
白餅とは違う素朴な風味があり、あんこやきな粉、小豆汁とも相性がよいのが魅力です。
鳥取県の山里の暮らしや食文化を知りたい人は、ぜひ一度、栃餅を味わってみてはいかがでしょうか。


