春になると地面から顔を出す筍は、限られた時期に味わえる季節の食材です。
山口県では、下ゆでした筍を味噌や酒、醤油などで煮る「筍の味噌煮」が家庭料理として受け継がれてきました。
農林水産省の「うちの郷土料理」では、主な伝承地域が山口県全域とされ、春を告げる一品として紹介されています。
名前だけを見ると味噌汁のように思えるかもしれませんが、煮汁が少なくなるまで煮含める筍の煮物です。
ここでは、山口県の筍の味噌煮の特徴や受け継がれてきた背景、家庭での作り方を紹介します。
同じ名前で知られる富山県の郷土料理との違いも見ていきましょう。
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山口県の筍の味噌煮とは?
筍を味噌味で煮含める春の家庭料理
筍の味噌煮は、下ゆでした筍を食べやすく切り、味噌を中心とした調味料で煮含める料理です。
農林水産省が掲載している山口県のレシピでは、麦味噌、酒、醤油、だし汁を使い、仕上げに木の芽を添えます。
筍を大きめに切るため、穂先のやわらかさと根元に近い部分の歯ごたえを味わえるのが特徴です。
味噌とだしの味を筍に含ませながら、煮汁が少なくなるまで仕上げます。
ご当地グルメよりも郷土料理に近い
筍の味噌煮について、特定の店が考案したという記録は、今回確認した公式資料には見当たりませんでした。
農林水産省では山口県の郷土料理として掲載され、家庭で一般的に作られてきた料理と説明されています。
店舗発祥のご当地グルメとしてではなく、旬の筍を家庭ごとの味付けで楽しむ郷土料理として紹介されています。
筍の味噌煮が山口県で受け継がれてきた背景
3月から5月に旬を迎える筍を味わう料理
農林水産省によると、筍の旬は3月から5月です。
成長が早く、やわらかな生の筍を食べられる期間が短いため、旬の到来を感じさせる食材でもあります。
農林水産省の資料では、特定の祭礼や祝い事との結び付きは記載されておらず、主に旬の時期に作られる春の家庭料理として紹介されています。
水煮を使えば季節を問わず作れますが、生の筍を下ゆでする工程も含めて春の手仕事として親しまれてきた料理です。
岩国だけでなく山口県全域に伝わっている
山口県では岩国の名産品の一つとして筍が挙げられますが、筍の味噌煮の伝承地域は岩国周辺だけではありません。
農林水産省は主な伝承地域を山口県全域としています。
また、JA山口県が2018年に掲載した防府市真尾地区の生産者紹介では、地元で収穫した筍を柚子味噌で煮る食べ方が取り上げられています。
岩国が筍の名産地として知られる一方、防府にも筍の生産と味噌を使った食べ方が見られることから、地域や家庭に応じた味で親しまれてきた様子が分かります。
発祥時期や考案者は明らかになっていない
農林水産省の資料には、筍の味噌煮が誕生した年代や考案者、発祥地は記載されていません。
公式資料では店舗発祥の料理とはされておらず、旬の筍を使う日常の家庭料理として紹介されています。
確認できる資料がないまま、発祥した年代や場所を一つに決めることはできません。
山口県の筍の味噌煮に見られる味付けと作り方の違い
麦味噌とだし汁で煮る作り方
農林水産省が紹介する4人分のレシピでは、筍1本に対して麦味噌大さじ2、酒大さじ2、醤油小さじ1、だし汁1カップを使います。
砂糖を加えず、麦味噌と酒、だし汁を合わせて煮含める作り方です。
山口県を含む中国地方では麦味噌も作られており、地元の味噌と春の筍を組み合わせた料理であることがうかがえます。
炒めてから甘辛く煮る作り方もある
「うちの郷土料理」の飲食方法には、水煮の筍を油でつやが出るまで炒め、水、味噌、砂糖、醤油、酒などを加えて煮る方法も掲載されています。
一方、同じページの具体的なレシピでは、油と砂糖を使わず、筍と調味料を鍋に入れて煮ています。
同じ公式ページの中でも二つの方法が紹介されていることから、筍を炒めるかどうか、甘味を加えるかどうかは家庭によって異なり、一つの作り方だけに固定されていないことが分かります。
防府市には柚子味噌で煮る例もある
JA山口県の生産者紹介では、防府市真尾地区で収穫した筍を柚子味噌で煮て食べる例が紹介されています。
これは山口県全域に共通する決まりではなく、地域の食材や家庭の好みを生かした食べ方の一例です。
麦味噌を使う基本的なレシピだけでなく、香りを添える味噌を使う家庭もあることが分かります。
山口県と富山県の「たけのこの味噌煮」の違い
山口県では筍を主役にして麦味噌で煮る
山口県の筍の味噌煮は、筍を主な食材とし、麦味噌、酒、醤油、だし汁で煮る料理です。
仕上げに木の芽を添えるレシピが紹介されており、筍そのものの食感を生かします。
一般的な作り方には、筍を油で炒めてから味噌や砂糖などで煮る方法もあります。
富山県では昆布を加えて一緒に煮込む
富山県にも、同じ名前の「たけのこの味噌煮」が郷土料理として伝わっています。
富山県版では筍と昆布を主な食材とし、厚めの輪切りにした筍を、昆布がとろりとするまで味噌とだし汁で長く煮るのが特徴です。
料理名は同じでも、山口県版は筍を中心に麦味噌や酒、醤油で味を含ませ、富山県版は昆布のうま味と食感を生かします。
検索すると両県のレシピが見つかるため、作りたい地域の材料と手順を確認することが大切です。
家庭で作る山口県の筍の味噌煮の作り方

材料(4人分)
・筍:1本(400g)
・米ぬか:1つかみ
・唐辛子:1本
・麦味噌:大さじ2
・酒:大さじ2
・醤油:小さじ1
・だし汁:1カップ
・木の芽:適量
米ぬかがない場合は、米の研ぎ汁または生米ひとつかみで代用できます。
市販の水煮筍を使う場合は、下ゆでの工程を省いて煮るところから始められます。
筍の下ゆで
1:筍の先端を斜めに切り落とし、切り落とした部分から皮に縦の切り込みを1本入れます。
2:筍を大きな鍋に入れ、たっぷりの水、米ぬか、半分に折った唐辛子を種ごと加えて強火にかけます。
3:沸騰したら、その状態を保ちながら1時間ゆでます。
4:火を止め、ゆで汁に入れたまま一晩冷まします。
5:翌朝に皮をむきます。
味噌煮の作り方
1:下ゆでした筍のやわらかい穂先はくし形に切り、それ以外の部分は半月切りにします。
2:鍋に筍、だし汁、麦味噌、酒、醤油を入れて火にかけます。
3:味噌を煮汁に溶かし、煮汁が少なくなるまで煮含めます。
4:器に盛り付け、木の芽を添えたら完成です。
おいしく仕上げるポイント
筍は、やわらかさの異なる穂先と根元側で切り方を変えます。
穂先をくし形、ほかの部分を半月切りにすると、それぞれの食感を生かしながら食べやすく仕上げられます。
また、煮汁が少なくなるまで煮る工程では、味噌が鍋底に付きやすくなるため、仕上がりが近づいたら煮汁の量を確認しましょう。
砂糖を使わない掲載レシピと、砂糖や油を使う作り方を途中で混ぜず、最初にどちらの味付けで作るか決めておくと調味料のバランスを取りやすくなります。
下ゆでした筍の保存方法
冷蔵する場合は水に浸ける
農林水産省のレシピでは、下ゆでして皮をむいた筍をすぐに使わない場合、水に浸けて冷蔵庫で保存する方法が紹介されています。
水を毎日替え、3日ほどを目安に使い切ります。
冷凍した筍は凍ったまま煮る方法がある
JA山口県の記事では、ゆでた筍を一口大に切って冷凍する方法が紹介されています。
調理するときは自然解凍せず、凍った状態でだし汁に入れて煮るのが、食感を損ないにくくするコツとされています。
同記事には冷凍保存期間の記載がないため、長期間保存できると考えて放置せず、家庭の冷凍環境も踏まえて早めに使いましょう。
筍の味噌煮に関するよくある質問(FAQ)
山口県内の飲食店で食べられますか?
農林水産省は、筍の味噌煮が家庭で作られるほか、飲食店でも提供されていると説明しています。
ただし、同資料には具体的な店舗名が掲載されていません。
旬の筍を使う料理は提供時期や仕入れによってメニューが変わる可能性があるため、訪問前に店舗の公式メニューを確認するか、直接問い合わせてください。
水煮筍でも作れますか?
水煮筍でも作れます。
農林水産省が紹介する一般的な調理方法も、水煮筍を切って調理するところから始まります。
水煮を使えば米ぬかを使った下ゆでと一晩冷ます工程を省けるため、短時間で作りたいときにも向いています。
まとめ
筍の味噌煮は、山口県全域で受け継がれてきた春の郷土料理です。
発祥した年代や考案者は明らかになっておらず、公式資料では、旬の筍を味噌味で煮る家庭料理として紹介されています。
農林水産省の掲載レシピでは麦味噌、酒、醤油、だし汁を使いますが、油で炒めて砂糖を加える方法や、防府市で紹介された柚子味噌を使う例もあります。
家庭や地域によって作り方が異なることも、受け継がれてきた料理ならではの特徴です。
また、富山県の同名料理は昆布を一緒に煮るため、山口県版とは材料や仕上がりが異なります。
生の筍が手に入る春は下ゆでから取り組み、手軽に作りたいときは水煮を使って、山口県の季節の味を楽しんでみてください。


